衝突回路

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本日もゲー音にて。 第一話

突然ですが、カテゴリに「小説」を追加しました。自作の小説を公開していきたいと思います。
今回は、だいぶ前に書いて友人に見せていた話をアップします。まだ一話しかありませんが、二話以降もこれからちょっとずつ書いていく予定です。
せっかくなので表紙↓付き。

ge-onhyousi1.png


 始業式が終わり、高校の校舎内はにぎわっていた。
 4月といえば新入生である。争奪戦である。
 校門や下駄箱周辺、教室の入り口、あらゆる場所で上級生が新入生に声をかけてはビラを手渡している。自分たちの部活に新しい人員を招き入れるのに必死なのだ。
 そのまま部室へと案内される者もいれば、ビラや貼り紙を頼りに自ら目的の部へと向かう者もいる。周りの雰囲気に影響されたのか、特に部活に興味がなかった者たちもなかなか帰宅する様子を見せず、とりあえずビラを集めていたりする。
 学校中が部活動ムード一色だった。だからというわけでもないが、一瀬(かずせ)真衣は大量にたまったビラを順番に眺めていた。
 中学生と大差ない小柄な体躯で、短い黒髪が快活な印象を放っている。見た目の幼さと髪型のせいか遠目には男の子にも見える容姿だ。
(あ、エレキだ)
 ビラの一枚に目を留める。軽音楽部のビラで、エレキギターやドラムを演奏している部員たちの写真が白黒で載っていた。その下には有名どころと思しき邦楽や洋楽のアーティスト名が羅列され、「その他、弾きたい曲があったら何でも言ってね!」と印刷されている。
 真衣はエレキギターの弾き方を教えてもらえる場所を探していた。エレキを使っていそうな音楽系の部を探して先輩に訊けば楽器初心者の自分でもなんとかなるだろう、とだけ考えていた。
 しかしビラに列挙されたアーティストたちの名前を見て急に不安になる。名前だけならなんとか知っているが、その楽曲を聴いたことはほとんどなかった。
 真衣が弾きたい曲のジャンルは最初から決まっていた。「弾きたい曲があったら何でも言ってね!」とは言うが、好きな音楽のジャンルが部員と全く違うのでは息が詰まるのが目に見えている。
 見込みが甘かったことに気づき思わず真衣は脱力した。ざっと調べた感じでは他にエレキを扱っている部はなさそうだ。軽音楽部のビラの裏側、部室の場所が描かれた簡易の地図を眺めながらつぶやく。
「個人でやるしかないのかなぁ。でも楽器の買い方とか練習方法とかわかんないし……」
「ほうほう。楽器が欲しいのか? 音楽がやりたいのか?」
 いきなり真横から声をかけられた。いつの間にか真衣のすぐそばに、上級生と思しき女生徒が立っていた。
「うわっ」
 思わず声を上げる。女生徒は真衣の手元のビラをじっと覗き込んでいた。
「い、いつからそこにいたんすか?」
「そんなことより、楽器やりたいんならうちの部に来なよ」
「え、と。どこの部ですか? 軽音楽部?」
「室内遊戯研究部っていうトコのもんです。2年の相沢千鳥と申しますよん」
 真衣が首をかしげ、不思議そうな表情を浮かべる。
「室内遊戯って……それ音楽と全然関係ないんじゃ」
 千鳥と名乗った女生徒がいきなり大きく口を開けてにかっと笑った。一見フレンドリーな笑顔のようでもあったが、妙な迫力を感じて真衣の体がびくっと縮こまる。
「大丈夫、名前なんて関係ないよ。君が音楽やりたいならウチは音楽部になるよ!」
「ええ? ちょっと、うわっ」
 千鳥の手が真衣の襟元に伸びる。予想外の腕力で制服を引っ張られて真衣の呼吸が一瞬止まった。そのままの勢いでほとんど引きずられるようにして連れて行かれる。
「どっ、どこ行くんすか?」
「うちの部室だよー」
 体育館の裏、校舎とは離れた位置にある部室棟へと小走りに向かう。3階建てで、きれいに塗装された外壁が比較的新しい建物であることを示していた。新入生の歓迎パーティでも行われているのか、あちこちから笑い声交じりの喧騒が聞こえてくる。
 真衣が連れて行かれたのは部室棟2階の一室だった。入り口の貼り紙にはマジックでやけに太く「室内遊戯研究部(仮)新入部員募集中!!!!」と書きなぐられている。
「(仮)……? (仮)ってなんすか!?」
「うちの部は名前にとらわれない、自由で奔放でいい加減な活動が信条だよ!」
 千鳥がドアを開けて部室の中に入っていく。真衣は付いていくべきなのかどうか迷ったが、今さら立ち去るわけにもいかず、躊躇しながら足を踏み入れた。
 教室の半分ぐらいの広さの部屋の中には、腕を組んで仁王立ちしているもう一人の女生徒の姿があった。
「おかえり千鳥。ちゃんと勧誘やってるわよね?」
「もちろん。ほら一人連れてきたよ」
 千鳥が半歩横に動く。ちょうどその背中に隠れるように立っていた真衣と、部室にいた女生徒の目が合った。
「初めまして。2年の小戸野実(おどのみのり)です」
「どっ、どうも。一瀬真衣です」
 千鳥が真衣の肩をぽんと叩きながら、実の顔を見てにやりと笑った。
「どうよ実。あんた好みの女っぽい男を連れてきてやったわよ」
「どういう意味よ……」
 ギロリとにらむ実をものともせず、千鳥はけたけたと笑っている。割り込みにくい雰囲気の中おずおずと真衣が口を開いた。
「あのー……」
 真衣が自分のスカートの端をつまんで軽く持ち上げてみせる。少しばかり外見が男の子っぽいという自覚はあるが、露骨に男扱いされるほどじゃないだろうと思う。
「一応スカートはいてるんですが。さすがに女だってわかりますよね?」
「んんー? でもひょっとしたらスカートはいた男かもしれないよね!」
 意図の読めない満面の笑みを見せながら千鳥が言い放った。意味がわからず、真衣はただ固まって呆然としていた。
 憮然とした表情で黙って見ていた実が割って入る。
「真衣ちゃん、千鳥の話は適当に受け流してちょうだい。キリがなくなるから」
 そう言うと実は組んでいた腕をほどいて左右の腰に当て、ため息をついた。なるほどこの千鳥という先輩は、なんかヘンな人なのだろう。とりあえず真衣はまともそうな実の言葉に従うことにした。
 部室の中をきょろきょろと見渡す。中央に大きなテーブルらしきものがあったが、よく見るとそれはネットのついていない卓球台で、その上に紙片やノートやペン、マンガや雑誌などがごっちゃに散らばっている。
 壁際に設置されたスチールの棚には掃除機やらブラウン管テレビやらが無造作に置かれていた。棚の大きさのわりに置かれている物の数は少ない。まだこの部屋が部室として使われ始めてから日が浅いような感じがした。
「それで、ここは何をする部なんですか?」
「何って……千鳥! アンタちゃんと説明してから連れてきなさいよ」
「だって部の方針なんてないに等しいじゃん。なんも説明することないし」
 千鳥があっけらかんと言い、ますます真衣は混乱する。何も方針がないというのも意味不明だが、それ以前になぜ自分がここに連れてこられたのかがさっぱりだった。
 そう思った矢先、部屋の隅にキーボードが置いてあることに真衣は気づいた。4脚のスタンドに載せてあり、鍵盤の数の多さやデザインを見る限りだとそれなりに値の張る品物のようだった。ひょっとして音楽系の活動もしているのかと思いじっと見ていると、
「キーボード弾きたい?」
 という声が急に聞こえてきた。千鳥のものでも実のものでもない、男性の声だった。よくよく見ると部室の奥、ちょうど千鳥の体に隠れて見えにくい位置にもう一人の部員が座っていたことに真衣は気づく。目がねをかけているその男は、見た目の雰囲気からしてたぶん年上だろう。そこでようやく真衣は、今の言葉が自分に向けられたものだということに思い至った。
 実が男の方を指差す。
「そこに座ってるのがうちの兄で、3年の」
「小戸野信一です。どうも。ちなみにキーボードは妹の私物ね」
 信一が座ったまま会釈し、真衣が慌てて首を縦に振って挨拶した。
「そーだったそーだった! 楽器やりたいって言ってたよね、何やりたい?」
 千鳥が会話に混じる。実はキーボードを一瞥し、それから真衣を見た。部室にいる3人の視線が自分に集中し、真衣の喉が緊張で強張った。
「えと……えー、エレキを」
「エレキギターってこと? エレキって言ってもいろいろあるけど」
 実が訊き直し、真衣がガクンと頷く。ほぼ同時に千鳥が真衣の背中をばっこし平手で叩いた。
「いっづぁ!?」
「オッケー! 待ってなさいや!」
 電光石火のごとく、千鳥が部室のドアを蹴り飛ばすように開けて外に飛び出していった。真衣は背中を丸め叩かれた箇所を手でさすっている。心配した実がすぐに駆け寄ってきた。
「大丈夫? 真衣ちゃん。ったく、あいつどこに行く気なんだか」
 少し経って痛みが引き、真衣はゆっくり体を起こした。実は真衣が落ち着いたのを確認すると、開けっ放しになったドアを閉めようと入り口の方に近づいていく。
 ドアノブに手を伸ばしたちょうどそのとき、部室の外からひょこりと顔をのぞかせる学生がいた。
「あっ、実先輩。もどりましたぁ」
 実はやや前のめりの姿勢になっていたため、突然現れた学生と目線が至近距離で重なった。手をびくっと震わせ、慌てて実が一歩引く。
「おっ、お、お帰り夕兎君」
 そそくさと実が部室の奥へと戻っていく。実のやけに落ち着かない様子が気になった真衣はその姿を目で追っていたが、入り口に立っている学生、夕兎に話しかけられて振り返った。
「新入生の人? 僕も1年なんだ。よろしくね」
「どーも……?」
 夕兎の服装を見て真衣が固まる。胸には自分のしているものと同じリボン、下はスカート、つまり女子の制服だ。
 もう一度夕兎の顔を見る。たぶん男だと思うが、やけに可愛らしい顔つきで女の子っぽい印象も拭えなかった。
「あれ? 男だよね? なんでスカートはいてんの?」
「かわいいでしょ!」
 夕兎がその場でくるりと一回転し、スカートがひらりと舞った。さらっとやってのけたその動作は実に女の子らしく、本当にこの子は女の子なのかなと真衣は思う。
 しかしよく考えたら回る女の子など普通は見かけないわけで、やっぱり何かおかしいと思った真衣は慌てて自分の頭の中を訂正した。
「いやいやそういう問題じゃない!」
「先輩、勧誘上手くいきませんでした。なんででしょうねー?」
 さらりと真衣の反論を流しつつ、夕兎がドアを閉めて部室の中へと入る。真衣はその背中を凝視し、それから助けを求めるような目で実を見つめた。
「夕兎君は千鳥の弟よ。まあ……服装のことは気にしないでちょうだい。そういう子なの」
「はぇ」
 真衣の口から同意とも疑問とも取れる曖昧な声が出た。実が困った顔をしているのに気づき、真衣はそれ以上追求するのをやめた。
「とりあえず真衣ちゃん、立ったままってのもなんだから適当にそのへんの椅子使ってちょうだい」
「あ、ハイ」
 卓球台のそばにいくつか置かれているパイプ椅子を見る。たぶんどれに座っても文句は言われないだろうが、初めての部室の雰囲気に緊張していた真衣は、どの椅子に腰掛けるか意味もなく迷っていた。
 部室の奥の方には信一が座っている。とりあえず離れて座るか、と思って手前のパイプ椅子に手をかけたときだった。
「お、バイオ4ですか」
 夕兎が言った言葉にぴくんと真衣が反応した。真衣が視線を送った先では、信一がノートパソコンに向かいPC用のゲームパッドを握っている。その後ろに立っている夕兎は腰を折ってディスプレイを覗き込んでいた。
「あれ……バイオイービルにPC版なんかあったかな」
「ん? 何?」
 真衣が思わずつぶやいた独り言を実が聞き返す。パイプ椅子に手を伸ばしたままの姿勢で止まっていた真衣が慌てて手を引っ込めた。
「いやっ、なんでもないっす。向こうは何をやってんですか?」
 夕兎たちの方に目をやりつつ真衣が尋ねた。実が少し迷ってから口を開く。
「たぶんゲームかなんかやってんでしょうね。あのね、うちの部はちょっと自由奔放っていうか……何やってもいいわけじゃないんだけど」
 部室でゲームを遊んでいる不真面目な部だと思われるのが嫌だったのか、実が言葉を濁していた。しかしそんな実の焦りとは裏腹に、真衣の視線はPCの方に釘付けになっていた。
「ちょっと見てきていいすか?」
「うん? いいけど」
 真衣が夕兎たちの方へと近づいていく。こちらから声をかけるより先に、ゲームパッドを握っていた信一が反応して振り向いた。
「なんかゲームやる? ……あ」
 信一がPCのディスプレイに再び目を向ける。ゲーム画面の中ではちょうど敵と思しき人間が斧を振りかざして襲いかかってきていた。素早く信一がゲームパッドで操作し、主人公が銃で敵の顔面をぶち抜く。
「あー、先輩これグロいからやめといた方がいいんじゃ」
 夕兎が注意し、慌てて信一がPCのキーボードに手を伸ばそうとした。
「いや平気っす。バイオ4はよくやってたんで」
 すかさず真衣が止める。信一は意外そうな顔を、夕兎は嬉しそうな顔をした。
「あ、もしかしてゲーム好きなの? バイオ好きな女の子って珍しいな」
 夕兎がパイプ椅子によりかかって前かがみになり、こちらに顔を近づけた。ちょっと興奮気味に話しかけてくるのを見て、夕兎と話が合いそうなことに真衣は気づく。
「バイオシリーズはほとんどやってるよ。一番好きなのは4だけど」
「ほんと? じゃちょうどいいや、今やろーよ」
 夕兎がそばにあったパイプ椅子を真衣の前に置く。信一がコントローラを差し出しノートPCを真衣の方に寄せた。
 急に誘われて一瞬迷った真衣だったが、とりあえず椅子に腰掛けてコントローラを受け取った。
「そういやバイオにPC版なんてあったんすね」
「うん、あるよ。他にもPCゲーならいろいろ入ってるから好きにやってね」
 どうやらPCは信一の私物らしい。なぜ部室に持ち込んで遊んでいるのかちょっと気になったが、高校の部活動ってそういうものなのかも、と思って真衣はそれ以上訊かなかった。
 コントローラのボタンをぺぺっと押してみる。家庭用ゲーム機のコントローラと若干握り心地が違うため違和感があるが、しばらく使っていれば慣れそうだ。
「あのー、ところでずっと気になってんですけど……結局ここは何をやる部なんですかね?」
 先ほどと同じ質問を今度は信一と夕兎にぶつけてみる。信一がしばらく迷ったあと、何とも言えない返事をよこした。
「んー。とりあえず、ゲームをやる部って訳じゃないかな。でもゲームやっててもオッケーな部」
「誰もオッケーしてないでしょーが!」
 黙って様子を見ていた実が声を上げた。やはり部室で遊んでいるのが気に入らないようで、その顔には軽いいらだちが見て取れる。
「ええっ、やっちゃだめですか!?」
 夕兎が悲痛な面持ちで叫ぶ。怒っていたはずの実が急に言葉に詰まった。
「え……いや、えっとね、夕兎君」
「だめですかぁっ」
 夕兎の目に涙がうっすら浮かび、電流が走ったように実が慌て出した。
「だっ、大丈夫よ夕兎君! 節度を守ってくれればたぶんきっと遊んでも平気なのよ」
「ほんとですか。よかった!」
 なんだろうこの奇妙なやりとりは……内心そう思いつつ真衣は迫りくる化け物をナイフと蹴りで的確にさばいていた。結局この部は何をやるところなのかという質問が流されたことをちょっと残念に思いつつ、ひさびさに遊ぶバイオ4はやっぱり名作だなと思う真衣だった。
 真衣の手さばきを見ていた信一が感嘆する。
「つーか真衣ちゃん、えらい上手いね」
「バイオ4は何十周したか覚えてないくらいやってますから」
「わっ、めちゃくちゃやり込んでるじゃん!」
 さっきまで泣き顔だったはずの夕兎が嬉々として真衣の顔をのぞき込んだ。やけに顔を近づけてくるので少しびっくりしたが、単に趣味が合うことを喜んでいるだけのようだ。
 真衣の隣にパイプ椅子を寄せて夕兎が座る。
「ねーねーじゃ他にどういうゲームが好きなの?」
「アクションゲームが特に好きだね。洋ゲーなんかもよくやってるよ、FPSとか」
 驚きと好奇の入り混じった表情で夕兎が声を弾ませる。
「あー、洋ゲー面白いよね。FPSやる女の子って初めてかも」
「まーたぶん少数派だろね。君は?」
「夕兎って呼んでいいよ。僕はねー……アクションでもRPGでも何でも好きだけど、一番ハマったのは64のスマブロかな」
 スマブロ、という単語に思わず真衣が「おっ」と声を漏らした。今まで遊んできたゲームの中でも特に熱中したソフトの1つだ。
「それだったら私も昔かなりやったなあ。アニキがすんげー強くてさ、1対1だと全然勝てないの。フォッケス使いなんだけど」
「あーフォッケスはタイマンだと強いもんね、スキ少ないし。僕は接近戦苦手だったからさ、ペカチュウでステージの端っこからひたすら電撃飛ばしたりしてたよ」
 真衣が肩を揺らしてくすりと笑う。
「私の小学校んときの友達にそういうのがいたよ。いっつも逃げるから必ず最初にボコボコにされてたけど」
「そうそう、必ず狙われるんだよね。だから逃げたり迎撃したりするのだけ得意だった。後ろにジャンプしながら雷で壁作ったりしてさー」
 話をしていて真衣は気づく。夕兎はやっぱり男の子だ。仕草や服装はともかく、ゲームの話題に食いつく姿は他の男子生徒と同じだった。
 相手が女装していることなどすっかり忘れて真衣は雑談に浸る。それを横で聞いていた信一が口を挟んだ。
「あ、じゃあ部室にヴィー持ってきたら? VCでスマブロ配信してるし」
「いいですねー、みんなでやりましょうよ!」
 夕兎が楽しそうに足をぱたぱたさせる。それは本当に大丈夫なのか? と真衣の脳裏に不安がよぎる。なぜなら、
「……ちょっと待ちなさい」
 いつの間にか3人の後ろに実が立っていた。背丈があるわけではないが、腕を組んでじっとこちらを見下ろす姿にはちょっとした迫力がある。
「さっきから何の話をしてるのか私にはさっぱりわからないんだけど、ひょっとしてゲーム機を部室に持ち込もうってこと?」
「そのとーりです! 先輩も一緒にやりましょう」
 実の内心を知ってか知らずか、夕兎が元気いっぱいに答える。あまりにはっきり言われたので実の方が答えに窮した。
「夕兎君、確かに遊ぶのはいいって言ったけど。でもね、ここは部室なのよ? 部室は何をするところなの?」
「部活動をするところですねっ」
「そうそう、そうよね。それでうちの部の活動ってなんだっけ?」
「えーとですねぇ……まだ決まってないですよね」
「え?」
 思わず真衣が訊き返した。実が声を荒げる。
「そうっ、まだ決まってないのよ不思議なことに! だからそれを早く考えなきゃいけないでしょう!」
「じゃあゲームを遊ぶ部ってことにしましょう」
 片手をぴっと上げ、まぶしいくらいの笑顔で夕兎が宣言した。実が咆哮を上げる。
「だからそれじゃあ部活動として認められないんだってば! っていうかわたしが認めねぇっ!」
 もはや真衣には何がなんだかさっぱりわからなかった。怒り狂う実をなだめようと夕兎が右往左往するのを尻目に、信一が淡々とした調子でしゃべりだす。
「真衣ちゃん、うちの部は今年創設されたばっかりなんだよね」
「え? そうなんですか?」
「うん。何の方針もないけどとりあえず部室だけもらったんだよ」
 はぁ? と真衣の口から気の抜けた声が漏れた。
「そんなのアリですか?」
「うん。夕兎君は、中身はともかく外見がいいでしょう」
「は? え、えっと」
「その夕兎君が理事長に頼み込んだと。そしたらなぜか部室をもらう許可が出たと」
「…………」
「そんなわけで、今俺らはここでゲームをしてるんだ」
 実が両手で卓球台をばんばん叩く。
「だからっ! ここはっ! 遊ぶ場所じゃねぇっ!」
「先輩落ち着いてください! 怒ってる先輩も素敵だけど優しい先輩も大好きです!」
 なんとか気を静めさせようと夕兎は実の肩をゆすりながら必死に訴えかけていた。その様子に少しも動じない信一を見て、ああこれはきっといつも通りの光景なんだろうなと真衣は察した。
「千鳥ちゃんね。さっき飛び出していった彼女、わかる?」
「ああ、はい。夕兎のお姉さんでしたっけ」
「あの子が急に部を作ろうって言い出してね。俺や実に声かけてきて」
「部の方針も何も決まってないのに、ですよね?」
「うん。それで俺ら4人が集まって、紆余曲折があったりなかったりしながら今に至るんだ」
 なんだか、わかったようなわからないような。話しぶりからしてこの信一という先輩が一番落ち着いているようだが、その人ですらいまいち部のことを理解していないように見える。
「つまりこの部は……ノリで作っちゃったんですか?」
「そういうこと」
 ずいぶんあっさりした答えだった。真衣は脱力した。実はまだ吠えていた。
 窓の外に見える、体育館の屋根と空の境目あたりをなんとなく眺めながら真衣が訊く。
「あのー、結局私はなんでここに連れてこられたんでしょうか。さっき千鳥先輩が、実先輩の好みがどうとか言ってましたが」
「それもあるかもしれないけどね。ぶっちゃけ言っちゃうと、千鳥ちゃんの行動に意味を求めちゃダメ。基本的にわけわかんない子だから」
「そういう人なんですね」
「うんうん」
 真衣の体をどっと疲れが襲った。なんで疲れているのかわからなかった。
「まあ案外、きっかけってそんなもんだよ。部活に限らずね」
 何気なく信一がつぶやいたその言葉には深い意味があるような気もしたが、真衣は何も聞き返さなかった。
 深く考えてもしょうがないことが人生にはたくさんある。そんな事実に気づかされた。悟りでも開いたような気分だったが、きっと明日の朝には忘れているに違いない。
 真衣がパイプ椅子に背中を預けてふうと息を吐くのと同時に、部室の入り口のドアが勢いよく開いた。
「戻ったぜ野郎ども!」
 顔をのぞかせたのは千鳥だった。左手に大きめの紙袋をぶら下げ、背中には黒っぽい荷物を背負っている。当然のごとくドアを閉め忘れてそのまま中へと入ってきた。
「千鳥ぃっ! どこ行ってたのよドアぐらい閉めなさいよいっつも夕兎君とベタベタしてんじゃないわよ!」
「おおう? 実がいきなりキレてる?」
 実の怒声に驚く気配すら見せずに千鳥がドアを閉じた。主人の帰りを待っていた子犬のように、夕兎が千鳥のもとへパコパコと足音を立てて近寄る。
「あ、姉ちゃんお帰りー」
「元気してたか弟よ!」
「うん。真衣といろいろ話してたー」
 千鳥に頭をぐりぐりと撫で回され、夕兎がくすぐったそうに笑う。ああ……ベタベタしてるってこういうことか、さりげなく今呼び捨てで呼ばれたなあ、などと考えていた真衣の視線が千鳥の背中の荷物にとまった。
「あれ、それひょっとして」
「エレキギター買ってきたぜ」
 千鳥が荷物を降ろす。黒くて薄いケースに入ったそれは、形状を見る限りだと確かにギターのようだった。
 さっきまで頭のてっぺんが沸騰していた実がそれを見て固まる。
「ギターって……あんたそれいくらしたのよ?」
「1万4千くらい。一番安いの売ってくれって言ったらコレ紹介された。練習用?」
「ふぇー、結構高いねー。旧DSもう一台買えるよ」
 夕兎がギターのケースをくいくいとつねる。実が少し呆れたように補足した。
「楽器の相場で見たらかなり安い方よ。っていうかそれ大丈夫なの? 千鳥、あんたまさか部費で落とす気じゃないでしょうね」
「もちろん部費だぜ。だってうちの部室に置いとくつもりだもん。ヘイ、真衣太郎!」
 マイ太郎ってなんだろと思った真衣だったが、すぐに自分のことを言っているのだと気づいて慌てて突っ込む。
「そ、そのあだ名はかなりイヤっす」
「早速弾こうじゃないの! エレキやりたいんでしょ?」
 真衣の返事を聞くこともなく、千鳥はケースのファスナーを力任せに開けてエレキギターを取り出した。
 黒のボディになんだかよくわからないツマミやら突起やらが付いたそれは、真衣の素人目にはいい物なのかどうかさっぱりわからなかった。突き出されたギターを受け取る。
「うわ、見た目より重いっすねこれ」
「そーなんだよ、肩こっちゃったよ。まーとりあえず弾け弾け」
 千鳥に言われるままに、ギターについたベルトのような紐を肩に引っ掛けて構える。紐の長さが調節されていないのでギターの位置がやけに低い。
 とりあえず親指で弦を軽く弾いてみる。
「あれ……なんか思ったより音小さいっすね」
「アンプ繋いでないしね。とりあえずチューニングしたら?」
 いつの間にかすっかり平静に戻った実が声をかけてくる。ふと真衣が顔を上げると、部員たちの視線が自分に集まっていた。単にエレキギターが物珍しいだけだろうが、みんな一斉にこちらを見つめてくるというのはなかなか緊張する。
「アンプ? チューニングってなんすか?」
「アンプは……エレキギターの電気信号を拾って増幅するものよ。かいつまんで言うと、それがないとちゃんとした音が出ないってこと。チューニングってのは音程を合わせることよ。そのままだと微妙にズレた音が鳴っちゃうから」
「あーそうだ。アンプとかチューナー? とかいろいろセットで付いてきたんだった。店員が説明してくれたんだけどなんかよくわかんなかった、けど教本もあるよっと」
 千鳥がギターと一緒に持ち帰った袋を開ける。ランドセルぐらいのサイズの箱に入った四角くて黒い機械やら、ちょっと太めのケーブルやらが出てきた。
 なんだかいろいろ入ってて本格的だなぁ、と思うと同時に、真衣の頭を不安がかすめた。
「あの、ちょっといいすか?」
「なになに?」
「これ部室に置くって言いましたよね? ここで弾くんですか?」
「そうだよ。とりあえずみんなで使ってもいいし、真衣太郎が好きなように使ってもえーよ!」
 そもそも入部すると決めたわけじゃないのに(つーか真衣太郎はやめてくれ)と真衣は内心思ったが、いつの間にか口に出しづらい状況になりつつあった。勝手に話がどんどん進んでいて焦る。はっきり言わないと本当に強制的に入部させられかねない。
 真衣が意を決して口を開くのと同時、絶妙なタイミングで夕兎が割って入った。
「ねー、真衣は何の曲やりたいの?」
「え」
 口を開けたまま真衣が固まった。実が夕兎に続いて尋ねる。
「そういえばそうね。どういう音楽がやりたいの? 楽器弾きたくなったってことは、何かきっかけでもあったんじゃないの?」
「きっかけっすか。えっとですね、ネットでエレキギターの演奏動画をアップしてる人がいて」
「動画?」
「はい。ヨウチューブっていうサイトの」
 何のことかわからないようで、実は不思議そうな顔をしている。千鳥がピンときたのか急に大声を上げた。
「わーかった! あれでしょ、ギターとか演奏してるとこを自分で録画して、ネットで公開するやつでしょ。見たことあるある。そんで自分も弾いてみたくなったと」
「そんな感じです」
 真衣がこくこくと頷く。実はいまいちピンときていないようだったが、そのまま改めて質問した。
「それで、好きな音楽のジャンルは? わたしが教えられそうなら手伝ってあげるわよ?」
「ジャンルは、えーと、ゲーム……」
「はい?」
 つい先ほどまで「部室でゲーム? ぶっ殺すよ?」な感じだった実の形相を思い出し、真衣の背筋が凍った。だがきちんと言わないと伝わりそうもない。
「ゲームの音楽を弾いてみたい、なー……なんて」
 ぼそりとつぶやいた言葉は、思いのほかしっかりと部室に響いた。
 実は真衣の顔を見つめたままポカンとしていた。たぶん実の言うところのジャンルとは、ロックとかジャズとか、そういう返答を期待してのものなのだろう。予想外の答えに戸惑っているようだった。
 ほんの少し間があいて、最初に口を開いたのは夕兎だった。
「あ、それいいね! やってみたい!」
 ずっと欲しがっていたおもちゃを手に入れたような、きらきらした眼差しが真衣に向けられる。ゲーム音楽、というのがしっくり来たのか、夕兎が真衣のそばに駆け寄ってきた。
「すっごい楽しそう! ねー何の曲やる? FF? ロックメン? ゼレダの伝説? ちょっとひねってスッペランカーとか!」
「いやスッペランカーはどうだろ、ちょ」
 思いっきり顔を近づけて夕兎がこちらを見つめてくる。どうもこれは夕兎のクセのようだ。鼻の先数十センチに顔を寄せられて一瞬息が止まる。
 夕兎の勢いに振り回されつつも、真衣はこみ上げてくる嬉しさを隠せずにいた。ゲーム音楽がやりたいと言って付き合ってくれる人がいるのかどうか、正直なところ不安だったのだ。
 興奮する夕兎に呼応するように、千鳥が高らかに宣言した。
「決めた。今日からここはゲーム音楽部、略してゲー音ってことにしよ!」
「その名前、ひょっとして軽音に対抗してる?」
 実がぷっと吹き出す。千鳥が意外そうな顔を実に向けた。
「ありゃ? 勝手に決めたらブチ切れるかと思ったのに。いいの?」
「ゲーム音楽にジャンルを絞って、楽器演奏や音楽研究をやるってことでしょ? 一応、部活動としても筋が通るし、夕兎君や真衣ちゃんの好みにも合ってるみたいだし……妥当なんじゃないの」
 間髪いれずに千鳥が閃き、両の手のひらをぱちんと打ち合わせた。
「じゃあ学祭でライブやろうぜ! ライブ!」
「が、学祭? 学祭って秋ですよね? あと半年くらいしかないんじゃ」
 今日初めて楽器に触ったばかりなのに、そんな短期間でライブができるのだろうか。そもそもいきなりライブって話が飛びすぎなんじゃ。しかし不安そうな真衣などお構いなしに、千鳥はノンストップで話を進める。
「じゃパート分けだ。とりあえず真衣太郎はギターな」
「いや、あの」
「実はキーボード弾けるよな。よろしく!」
「はいはい」
「んで、アタシと夕兎が……っていうか、あと何のパートがあったっけ」
 こめかみに指を立て、実が盛大にため息を吐き出す。
「アンタ、そもそも音楽の知識なんかさっぱりでしょ」
「おうよ!」
「やっぱり……まあいいわ。とりあえず一般的なバンド構成だったら、あとベースとドラムがいるんじゃない? どういう曲をやるのかにもよるけど、ギターがもう一人いてもいいかもね」
 ふと何かに気づいた実が、黙って話を聞いていた信一に声をかけた。
「兄さん、今年受験よね。忙しい?」
「たぶん練習してる暇はあんまりないね。3年は夏で引退扱いだし。ドラムだけ打ち込みでやろうか?」
 真衣と夕兎が同時に「打ち込み?」と疑問の声を漏らした。タイミングが合ったことに真衣は少し驚き、夕兎は嬉しそうにまばたきをした。
「パソコンに譜面を入力して、自動演奏してもらうってことだよ。そこだけ俺がやるから」
「そうね。ドラムは練習環境を用意するの大変だし、曲によっては打楽器のパートがない場合もあるし……ちょうどいいかしらね」
 そういうやり方もあるのか、と真衣は内心感嘆していた。そもそも真衣の頭の中にはギターを弾いている自分のイメージが漠然とあっただけで、部活動で音楽をやるというのがどういうことか深く考えていなかったのだ。
 実がてきぱきとパート分けを続ける。
「じゃ、ギターとベースを千鳥か夕兎君がやってちょうだい」
「先輩。ベースってどんな楽器なんですか?」
 夕兎が実の方を見て首をかしげる。実は口元に手を当てて少し考えてから、真衣が持っているエレキギターを指差した。
「この場合はギターの一種、って言えばいいかな。形状はギターとほとんど同じで、ギターよりも低い音域を鳴らせる楽器よ。低音担当の楽器だからたぶんギターより大きいんじゃないかしらね……あんまり詳しく知らないけど」
「さっき楽器店に行ったときにやたら弦が太いギターが置いてあったけど、あれがベースかな?」
 千鳥が思い出し、実が「おそらくそうね」と頷いた。夕兎が部室内をうろうろしながら考え事を始める。
「うーん、低音かぁ。姉ちゃんはどっちがいい?」
「どっちがいいとな。よし、じゃあアタシの目を見るがいい」
 千鳥が夕兎の肩をがっしり掴み、顔を近づけて目をじぃっと見つめる。だんだんと2人の距離が近づき、え、何、キスすんの? と真衣が焦り出したあたりですっと千鳥が顔を離した。
「さあ当ててごらん」
「わかった。姉ちゃんはギターがやりたいんだ!」
「正解っっ!」
 千鳥と夕兎が2人でぱちぱちと手を叩く。謎のやり取りを目の当たりにした真衣は、とりあえず解説を求めようと実にこっそりと話しかけた。
「今の何なんでしょうか」
「バカップルがのろけっぷりをアピールしたのよ」
 白けきった顔で実がため息をついた。ああなるほど、これもきっと日常茶飯事なんだろうなと真衣は悟る。深く考えるだけ無駄だと。
 ぱん、と手を叩き実が話をまとめ始めた。
「じゃ、千鳥がギターで夕兎君がベースね。パートも決まったことだし、機材はなるべく部費で落として揃えましょう。楽器は各自親と相談して調達するか、ダメならバイトしてお金溜めるなり、千鳥が買ってきた練習用のやつを貸し借りするなり……まあ、なんとかなるでしょ」
 話に区切りがつき、実が主張していた「部の活動内容」も決まった。
 さあ今から動き出そうという雰囲気が部室に充満していたが、その空気に真衣は戸惑っていた。
「あの」
「ん? 何?」
 真衣の小さな声に気づいたのは実だけだった。目をそらし、しばらく迷ってから声を絞り出す。
「今さら言うのもどうかと思うんですけど、その。まだ入部するって決めたわけじゃなくて」
「えっ――」
 こっそり実にだけ伝えたつもりだったのに、夕兎が強烈に反応した。ぐるっと首をひねって愕然とした表情でこちらを見つめる。
「入んないの? なんでっ!?」
 夕兎の視線に射抜かれて言葉に詰まる。盛り上がっていた部室の空気がにわかに凍りつくのを感じ、真衣の背中に冷や汗がにじんだ。
「いや……その、入んないって決めたわけじゃなくてさ」
 先ほど部室でのゲーム遊びを実に懇願したときとは違い、夕兎の目には涙がたまっていない。それが夕兎の真剣さを表していた。一緒にやろうと言ってくれたのが嬉しかっただけに余計やりづらかった。
「ほら、まだ他の音楽系の部は見に行ってないし」
 はっきりとは言わなかったが、真衣はここで本当に音楽がやれるのか疑問に思っていた。楽器ができるのはおそらく実だけ、機材もないし部員も少ない。他に音楽専門の部があるならそちらに入ったほうがいいかもしれないわけで、今すぐここに入部すると決断することに迷いがあった。
 そんな真衣の不安を見透かしたように、実が自信に満ちた顔で口の端を「にっ」と曲げた。
「真衣ちゃん。音楽なんてね、部活に頼らなくたっていくらでもやれるのよ」
 千鳥が買ってきたセットの中から、実がエレキギターの教本をすっと拾い上げた。やや芝居がかったその挙動に真衣の視線が吸い寄せられる。
「練習方法も楽器の選び方も、自力でいくらでも調べられるわ。教本なんか腐るほどあるしネットで検索してもいい、楽器店で店員に訊くのもアリ。必要なのは環境じゃなくて、あなたのやる気だけよ」
 実の力強い口調に気圧されて真衣は呆然としていた。頭の中をぼんやりと満たしていた「楽器を始めるなら音楽系の部活に入らなきゃ」というイメージが徐々に霧散していく。
 人差し指を立ててくるくると回しながら、まるで政治家の演説のような口調で実がまくし立てる。
「幸か不幸か知らないけど、うちの部はまだ方針が決まってない。言い換えればこれから好きなように決められるってことよ。しかもそこにはあなたと趣味の合いそうな友達がいて、あなたがやりたい音楽を一緒にやろうって言ってくれてる」
 実の人差し指がぴたりと止まった。真衣の顔を指差して。
「迷う必要ある?」
 真衣の頭の中で1つの疑問が生まれた。
 この人たち一体何なんだろう?
 勢いで手に入れた部室で遊んでいたかと思えば、たまたまここにやってきた自分に合わせて部の方針を決める。気づけばギターがそこにあって、こちらの不安なんてお見通しで、あっという間に入部のお膳立てが済んでしまう。
 この輪の中に入ったらもう元には戻れないという、得体の知れない高揚感が腹の底にわき出すのを感じた。
 いつの間にか信一が真衣の横に立っていた。一枚の紙を差し出す。
「これ入部届けね。もし気が向いたら名前書いて持ってきてください、と」
 それだけ言うと信一は席に戻り、何事もなかったかのようにゲームパッドを握って再びゲームを遊び始めた。千鳥と夕兎がこちらを見てにぃっと笑う。
 さっきまで何を迷っていたのか、思い出せないことに真衣は気づいた。


→第二話へ

コメント

す、すごいっ!!

小説サイトとかへ転載しても大丈夫なくらいの質ですね。

  • 2010/08/24(火) 21:43:33 |
  • URL |
  • ぽんよ #-
  • [ 編集]

話の続きがすごい気になるな~。

  • 2010/08/25(水) 20:09:28 |
  • URL |
  • キーボード #-
  • [ 編集]

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  • 2010/09/06(月) 17:43:30 |
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